こんにちは。
この記事では、アクチュアリー試験の1次試験科目『会計・経済・投資理論』に合格した方(もしくは試験勉強に飽きた受験生)向けに、試験範囲を超えた中級・上級の書籍を紹介したいと思います。
試験対策の参考書籍としては全く役に立たないか、仮に役に立ったとしてもかなり遠回りになるので悪しからず。
また、私自身が会計学の専門的教育を受けておりませんので、会計分野だけは非常に手薄になってしまいますが、その点ご容赦ください。
では早速行ってみましょう!
『会計・経済・投資理論』とは?
これを読んでいる方の多くはすでにご存知かとは思いますが、『会計・経済・投資理論』とはアクチュアリー試験という民間資格試験の科目です。指定の教科書があり、それぞれの分野についての基本的な事項を問うものとなっています。
試験内容および指定教科書はこちら→
指定教科書はそれなりに良い本だとは思うのですが、残念ながらどれも入門的内容で終わってしまっています。せっかく時間をかけて勉強したのだから、これで終わるのは少しもったいないんじゃないかと個人的には思ってしまいました。
私と同じ考えを持っている方がいる事を願いつつ、そうした方々に指針となる書籍をシェアできればと思います。
まずは会計から行ってみましょう!
会計
出鼻を挫くようですが、先程も述べた通り私自身が会計学についての専門的知識がないので、詳しく書くことが出来ません。
代わりといってはなんですが、大学院で会計学を専攻していた方のブログ記事を見つけたのでシェアします。
会計学研究について非常に詳細に書かれており、私自身も勉強になりました。
会計学って何? 会計の研究って何するの? 会計学の手法や作法を解説していきます! | とむるの目録
また、会計不正を防ぐためには、どのように会計制度を設計すべきかという問題に、ゲーム理論の枠組みを用いた研究もあるようです。
さらに、私個人のオススメとして以下の本を紹介します。複式簿記や減価償却などの会計の基本手法がどのような歴史的要請に基づいて成立してきたのかを見ると勉強が少し楽しくなるんじゃないかと思います。
経済
経済学の教科書は日本でも世界でもかなり標準化がなされており、読むべきものが決まっています。分野ごとに違いますので、一つ一つ紹介していきます。
ミクロ経済学
ミクロ経済学の興味を持ったら真っ先に読むべきは以下の2冊のどちらかです。
『ミクロ経済学の力』はれっきとした教科書ですが、あらゆる人に向けて書かれたビジネス書でもあります。具体例や直観を用いた説明が豊富で非常にわかりやすく書かれています。著者の神取先生は「経済学の直観的説明をさせたら日本一上手い」と言われており、この本の中でその手腕をいかんなく発揮されています。ちなみに私はこの本を読んで経済学の道に進むことを決めました。
『ミクロ経済学』は学部向けの授業や院試対策の定番です。学部レベルのミクロ経済学のついて簡潔かつ網羅的に書かれていて、使いやすいテキストです。『ミクロ経済学の力』は言葉による説明が多く数式による説明が少し弱いので、数式を用いて説明する方が好きな方はこちらがオススメ。(それでもミクロ経済学の力は一読して損はないです)
この2冊のうちどちらかを読んだらゲーム理論に挑戦しましょう!ゲーム理論は一応ミクロ経済学の一分野となっています。
ゲーム理論の教科書は以下の2冊がオススメです。
『ゼミナールゲーム理論入門』は文字通り入門者向けの教科書です。中々分厚いですが、その分説明は丁寧で読みやすい印象です。ゲーム理論にじっくり入門したい方向け。
『ゲーム理論・入門 新版』も同じくゲーム理論の入門的テキストです。ページ数が少なくコンパクトですが、その分簡潔に書かれています。数式のよる説明が豊富なので、簡潔かつ数式による説明が好きな方はこちらがオススメ。また、他では無視されがちな協力ゲーム理論というトピックにも触れられています。
さらにミクロ経済学を極めたい方は以下の2冊を読みましょう!
どちらも洋書かつ上級者向けなので注意です。(レベル的には数学科卒の方ならば問題なく読めると思います。)
A Course in Game Theory (The MIT Press)
- 作者:Osborne, Martin J.,Rubinstein, Ariel
- 発売日: 1994/07/12
- メディア: ペーパーバック
どちらも大学院レベルのミクロ経済学・ゲーム理論の世界標準テキストです。世界中の大学院生は初年度に必ずこれらの本を読まされ読みます。
『Microeconomic Theory』はミクロ経済学の包括的テキストで、特に市場均衡理論について詳しく書かれています。必要な数学を巻末で簡単に説明しているので、必要に応じて確認できるのがありがたいです。
『A Course in Game Theory』はゲーム理論の包括的テキストで、恐らく数学的に最も厳密に書かれた教科書です。『Microeconomic Theory』はゲーム理論の記述が弱いので、ゲーム理論に興味がある方にはこちらがオススメです。著者のホームページから(合法的に)無料で入手できます。
マクロ経済学
試験勉強を通して基本的なケインジアンのモデル(IS-LMとか)を学んだ方には以下の2冊がオススメです。
『マクロ経済学 第2版』は中級者向けの標準的テキストです。マクロ経済学は扱うトピックが多岐にわたりますが、それぞれを簡潔に説明しているのが魅力です。現代では主流のミクロ的基礎付けのあるマクロ経済学を前面に押し出していて、45度線分析やIS-LM, AS-ADなどの伝統的ケインジアンのモデルの扱いは最小限になっているのが特徴です。
『マクロ経済学 新版』も中級者向けの標準的テキストです。非常にページ数が多く文字も多いので、通読するよりは自分の興味のあるトピックを選んで読んでいくのがオススメ。他の本では手薄なマクロ経済統計や大学院入門レベルのトピックについてもそれなりに詳しく触れている点が特徴です。
この次にオススメなのが以下の『動学マクロ経済学へのいざない』です。マクロ経済学は学部と大学院の内容に乖離があるのですが、大学院レベルのマクロの入門書として、それらを橋渡しするものとなっています。本自体がコンパクトで、個人的には一番オススメです。
さらにマクロ経済学を極めたい方は以下を読みましょう!マクロ経済学はトピックが多く、かつそれぞれ独立しています。色々と挙げておくので、興味に沿って選んで読むのがオススメです。
Recursive Macroeconomic Theory (The MIT Press)
- 作者:Ljungqvist, Lars,Sargent, Thomas J.
- 発売日: 2018/09/11
- メディア: ハードカバー
Recursive Methods in Economic Dynamics
- 作者:Stokey, Nancy L.,Lucas Jr., Robert E.
- 発売日: 1989/10/10
- メディア: ハードカバー
『Recursive Macroeoconomic Theory』は大学院レベルのマクロ経済学の世界標準テキストです。マクロ経済学の全分野の基本事項を網羅しており、これを読む事が大学院生の初年度の仕事になります。1000ページ以上あるので、トピックを選んで読むのがオススメ。
『Monetary Policy, Inflation, and the Business Cycle』『Monetray Theory and Policy』はどちらも現在の主流であるニューケインジアンモデルの入門的テキストです。前者は理論モデルの解き方とその意味するところをシンプルな形で解説しています。後者は分厚いですが、実証分析や金融政策などの話題にも触れつつ、丁寧かつ包括的に解説しています。
『Introduction to Modern Economic Growth』は経済成長理論のテキストです。経済成長理論の最高峰の教科書で、Introductionと書いてありますがこれは嘘です。他の本と違って連続時間モデルを扱っているので、微分方程式の知識が多少求められます。ちなみに著者のAcemogluは現代を代表する大経済学者で、断言しますが、間違いなくいずれノーベル経済学賞を受賞します。
『Recursive Methods in Economic Dynamics』はマクロ経済学を学ぶのに欠かせない動的計画法の理論について解説している教科書です。非常にわかりやすく、かつ経済学への応用を念頭に置いて書かれているので、マクロ経済学で使われる数理的手法に興味がある方はオススメです。
次回は投資理論分野について関連書籍を紹介したいと思います!
ではでは。